福岡壯治氏にきく「音楽のまち神戸を創る」

インタビュー
福岡壯治さん(神戸電子専門学校校長)
SUMMARY
神戸のまちを盛り上げようと日々走り回るキーマンへのインタビュー第一弾は、神戸電子専門学校校長の福岡さん。音楽というキーワードを通して、人々の心地よい暮らし方そのものがコンテンツとして集客力をもつ、ソーシャルなまちづくりをめざして活動しておられます。
聴き手
星加ルリコ、村上豪英(神戸モトマチ大学 代表)

なぜ音楽なのでしょうか

経済のあとに生活が来るのではなく、人々の生活そのものが経済をひっぱるようなまちを創れないかと考えています。キーワードは「心地よさ」。神戸が、心地よさを誇ることのできるまちになればいいなあ、と思います。

その際、人が集まる、ということをデザインする必要があります。人は最良のコンテンツであり、人が集まることほど楽しいことはありません。人が集まる場を創るための手法は数々ありますが、世界的にみてもお酒と音楽のセットがスタンダードだと思います。

例えば、医療産業都市もすばらしいプロジェクトだと思いますが、残念なことに一般企業や一般市民は関わりをもちにくい面があります。一方で、音楽によって人が集まるまちづくりはハードルが低く、演奏できる場所さえあれば誰でも関わることができます。

音楽といっても、クオリティさえ高ければライブでもCDを流すだけでもかまわないと思います。ファッションの世界でも、デザイナーよりもコーディネイターをもてはやされる
時代。音楽についても、バンドよりもDJの人気が出ています。心地よさを追求すれば、生演奏にこだわることの方が不自然な気がします。

具体的な取り組みを教えて下さい

「音楽の街“神戸”を創る会」というグループを、一年ほど前につくりました。このグループによるイベント”078”では、まちなかで音楽を楽しむことを定着させたいと願い、ストリートゲリラライブなどを試行しています。

長い目で見ると、まちのなかに「ラグーン」とでも言うべき、音楽のあるたまり場が必要だなあと感じます。世界中のまちなかには音楽を楽しめる空間がありますが、諸規制により日本では公共空間で演奏することもままなりません。空き地を活用してでも、三宮のまちなかに拠点を創りたいと思います。

その先には、ライブコンテンツがあふれ、そこに人が集まり、産業の源にもなるようなまちを夢想しています。LADY GAGA もMADONNAもレコード会社とは契約せず、ライブ会社と契約する時代。パッケージコンテンツの価値は下がり、ライブコンテンツの価値は上がっています。

これは決して生のライブだけがいいという話ではありませんし、コンサート会場でアーティストをみなが注視することがいいとは思っていません。むしろ音質さえよければ、サウ
ンドそのものはCDでもいい。集う人自体がみな、ライブコンテンツとなる。そんなソーシャル都市へと発展すればいいなあと考えています。

神戸のサウンドとは

神戸の音楽とは何か、という問いに対する答えはまだ定着していませんし、人によってバラバラなのが現状です。まだ探さないといけない段階なのですが、洋楽をただまねするだけでは世界的な発信力を持ち得ない時代だからこそ、今から共通解を模索できるのは、むしろチャンスだと思います。

これまでの模索のなかで、「汽笛」を神戸の代表的サウンドとして共有できることはわかってきました。歴史的に視ても、江戸時代には日本には毎夜毎夜音楽を楽しむ文化があり
ました。妙にかしこまった文化のなかで音楽を遠ざけるのではなく、オリジナルなサウンドを味わい、小気味よく踊ることのできる、民度が高いまちにしていきたいと思います。

音楽のまちとしてのポテンシャル

日本書紀にはすでに西暦200年代に登場するなど、神戸は歴史あるまちです。そのうえ、外国の人や文化が流入し、海外で多くを学んできた人も多く、文化的にはきわめてポテン
シャルが高いまちなのです。テクノやハウスについてはレコード流通の6割が神戸を経由し、数多くのスタジオミュージシャンを輩出するなど、隠れた音楽力もあります。

スタジオミュージシャンが多いということは、セッションが、神戸オリジナルの音楽スタイルとして定着する可能性もあるということです。以前、”078”のストリートゲリラライブを開催したとき、セッションに飛び入り参加しようと、知人がサックスをもってきたことがありました。そのとき、音楽のまち神戸のポテンシャルを確信しました。演奏者と聴き手が2つに別れてしまうのではなく、だれもがそれぞれサウンドを楽しみながら、全ての人の心地よさがコンテンツとなる。そんなスタイルが、神戸の魅力となればいいですね。


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