神戸モトマチ大学が進める 「神戸オープンソースプロジェクト」
- 今回の発信者
- 村上豪英(神戸モトマチ大学 代表)
- SUMMARY
- 「神戸オープンソースプロジェクト」は、神戸の新規事業にアイデアと共感を集める取り組みです。
- special thanks!
- 中野久美子さん(グラフィックファシリテーション)
神戸モトマチ大学の新しい取り組み
神戸モトマチ大学は、これまでも基本講義だけでなく、Sparks!やPicnicなど様々な活動をしてきました。これらは広い意味では、誰かが先生役として何かを伝える「講義」と括ることができます。しかし、「大学」の2文字から連想すると、研究や学食、サークル活動やインキュベーションなど、全く別の機能を併せもつことができます。
神戸モトマチ大学も、講義以外の機能ももちたいと考えました。その第一歩が、ワールドカフェの形式をつかって神戸の新規プロジェクトを支援すること。私たちにできるインキュベーション機能です。
通常、企業でも団体でも、新しいプロジェクトをスタートさせるときには、そのコンセプトからビジネスプランまで、全てを内部で創りあげようとします。しかし、組織の内部をよく見てみると、ビジネスを機能的にオペレーションするために職責がばっちりと区分されているのが普通です。新事業を立ち上げるために社内の知恵を結集しようとしても、なかなかうまくいきません。
ビジネスの舞台は、組織の外にあります。立ち上げるときから組織の外から多くの意見をもらった方が、広く支持されるプランを創りやすいのです。多くの市民のアイデアと共感を集めて、新規事業が成功する可能性を少しでも上げていきたい。それが、神戸オープンソースプロジェクトです。
具体的なすすめかた
ワールドカフェは、12人以上の多くの人々が対話を通じて、特定のテーマについての共通理解を創りあげる手法で、1995年にアメリカで開発されました。この手法をうまく使えば、全ての参加者から考えを引き出しながら、みなが合意できるポイントを探ることができます。
対話は通常4人一組で、20~30分程度のセッションを数回繰り返しますが、セッションごとにメンバーが他のテーブルと入れ替わることが大きな特徴です。アイデアを他家受粉することによって、一人ひとりが充分に対話をしながら、全体として話題の流れをシェアすることができるのです。
参加者の特性、テーマの難易度などによって、必ずしも優れたアイデアやコンセプトを共有できる結果を生み出せるとは限りません。しかし、参加者は新しいプロジェクトについての考えを深めますし、強力なサポーターともなり得ます。新規事業のインキュベーションとしての意味は深いと思います。
神戸オープンソースプロジェクトの事例
すでに神戸オープンソースプロジェクトは起動しています。
神戸のアパレル企業A社が、新規事業としてサービス分野に進出するにあたって、ワールドカフェ形式でコンセプトを考えたのがひとつの事例です。このときにはA社から5人、外部から11人の、合計16人が参加しました。
4グループに分かれて行った対話ののち、マインドマップとグラフィックファシリテーションによって対話のポイントをまとめました。結果としては、当初は想定できなかったA社ならではのコンセプトを共有することができ、大成功に終わりました。
うまくコンセプトの共有までには至らなかったワールドカフェもありましたが、そんなときでもプロジェクトの課題や可能性を共有できました。そのテーマに関心をもち、ポジティブに発言できる多様な参加者を募ることがポイントですが、神戸モトマチ大学のネットワークはそれを実現します。
今後の展開について
ファシリテートの世界は奥深いものです。まずは、私たち自身がもっとスキルを磨かなければなりません。また、ファシリテーターをできる方を増やし、「神戸ではいつもどこかでワールドカフェが開催されている」ようにすることも大切です。まだまだ乗り越えるハードルは高いと感じています。
しかし、ハードルの向こうには大きな夢が見えます。神戸では、集合知を創り出せる。社会をよくする意欲的なプロジェクトにはみんなが応援する。そんなまちになれば、神戸から世界に発信できるプロジェクトが続々誕生するでしょうし、神戸の魅力をもっと高められると思います。
試行錯誤のこれまでに、ワールドカフェに参加されたみなさんに感謝いたします。準備や運営にあたっては、神戸モトマチ大学のスタッフが随所で汗をかいてくれました。また、グラフィックで対話のポイントを表現してくださる中野久美子さんにも本当に助けて頂きました。何が共有できたのか、直感で理解できるようにまとめられるグラフィックファシリテーションの力に、大きな可能性を感じます。
神戸モトマチ大学は、「講義」につづき、「ビジネスインキュベーション」の機能をまちに創出できるように取り組みをはじめました。そして近い将来、「研究と実践」というもう一つの機能を発揮できるように進化します。神戸をもっとステキなまちにしていくため、ご参画をお待ちしています。